今月のおすすめ本:『稲盛和夫の実学』

今月のおすすめは、稲盛和夫著『稲盛和夫の実学―経営と会計』(日本経済新聞出版)です。京セラやKDDIを創業し、経営破綻したJALの再建を果たした稲盛氏が、自身の経営哲学と会計の考え方を惜しみなく語った一冊です。

この本を読んでまず印象的だったのは、「会計がわからない経営者に、経営はできない」という冒頭近くのメッセージです。少し厳しい言葉に聞こえるかもしれませんが、稲盛氏はそれを責めているわけではなく、「経営者こそ、数字の本質を自分の言葉で理解してほしい」という思いから語っています。その姿勢がとても誠実で、読み進めるほどに引き込まれました。

特に参考になったのは、キャッシュフローに関する考え方です。稲盛氏は「利益が出ていても、現金がなければ会社は倒れる」という現実を、自身の経営経験をもとに丁寧に解説しています。損益計算書の利益と、手元に残る現金は必ずしも一致しない――このことを頭ではわかっていても、日々の経営の中で見失いがちな経営者は少なくないはずです。改めて「手元の現金を大切にする経営」の重要性を気づかせてもらいました。

また、「値決めは経営だ」という言葉も刺さりました。価格を安易に下げることへの警鐘と、適正な利益を確保することへの強い信念が込められており、値引き競争に巻き込まれやすい中小企業の経営者にこそ読んでほしい視点だと感じます。

会計や財務の本というと難しそうなイメージがありますが、この本は数式や専門用語に頼らず、稲盛氏自身のエピソードを交えながら語られているので、とても読みやすいのが特徴です。経理担当者に任せきりになっている方も、ぜひ一度手に取ってみてください。数字と向き合うことへの意識が、きっと変わるはずです。

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